「雑念」を打ち消す

メンタル・ヘルス

雑念にカウンター刺激

 前回、「雑念は寝つきを妨げる」という記事を書きましたが、この記事はその続きになります。

 前回の記事の中で、雑念に妨げられずに寝つくには、「現在」の刺激に、ぼんやりと、万遍なく注意を漂わせることが必要だと述べました。

 今回は、「雑念」に対抗する「カウンター刺激」をぶつけ、雑念を打ち消す、より積極的なやり方について話してみます。

テレビやラジオをつけて寝る

 雑念に対抗する、もっともポピュラーな方法は、寝床に就いた時、テレビやラジオをつけて寝るというものです。たとえば、なかなか、夜、寝つけない人も、食後にテレビを観ながら、うたた寝をするという話は、よく聞く話でしょう。これの方法は、そのことを利用したものです。

 気をつけることは、30~60分位で消えるタイマーをつけることと、テレビやラジオから聞こえる話声が気になる場合は、気にならない程度に音量を下げることで

 間違ってほしくないのは、この方法は、ベッドで寝ながらテレビを観たり、ラジオを聞いたりすることは、まったく違うということです。これは、テレビを観るためでなく、あくまで、寝るためにテレビをつけるということだからです。ちなみに、ベッドでテレビを観るという習慣は、かえって、不眠症の原因となりかねません。なぜなら、テレビが面白いと夜更かしすることで、睡眠リズムを乱す要因となります。また、テレビをつけたまま寝込んでしまうと、中途覚醒後に寝つけなくなる可能性もあります。

 同じ音による刺激なら、音楽でも構いません。ただ、興奮するような音楽を避け、リラックスする音楽を選ぶといいと思います。同様、波や風や川のせせらぎの音も、寝つくのに役立つと考えます。それらの自然の音には、1/fゆらぎがあり、それは神経をリラックスさせてくれます。

難しい本、つまらない本を読む

 学生時代、つまらない授業や、理解できない講義を聴いていると、眠くなり、寝てしまうことを経験したことがあるでしょう。ヒトは、見たり聴いたりしているものがつまらないと、そのことに関心や注意を集中し続けられなくなります。そのような脳の働きを寝つきに利用するやり方が、次のものです。

 それは、寝床についた時、しばらくの間、つまらない本や、理解するのが難しい本を読んでみるというものです。たぶん、しばらくすると、すこしぼんやりと眠くなってくるでしょう。その時に、本を閉じ、明かりを消して寝てみるというやり方です。ちなみに、筆者が選んだ本は、「宇宙論」の本でした。

頭の中で雑念を消すイメージングをする

 次のやり方は、浮かんできた「雑念」を想像の中で、消していくといったものです。

 たとえば、浮かんできた「雑念」をゴミ箱排水口の中に捨てるといったことをイメージするといったものです。おそらく、雑念は次々と現れてくるので、そのイメージングを何度も繰り返すことになります。ちょうど、モグラたたき・ゲームのように、次々と現れるモグラをたたいていくといった感覚に近いと思われます。

 それ自体、考えることのない、単純な作業の繰り返しなので、たぶん、しばらく続けていると雑念は浮かばなくなり、それで、うまく寝つける可能性があります。昔からある「羊が一匹‥‥」といったやり方の場合、数を数えるという、考える作業があるので、単純なものとは言えない分、寝つきにはあまり役立たないと思います。

「ことばのクスリ-薬に代わるこころのケア-」:志村宗生;東京図書出版、2023

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