睡眠は、食欲や排便や発汗などと同様、体がその機能を維持するために働らいている、「生理現象」です。この生理現象というものは、ヒトが自在にコントロールすることはできません。体は、外界からのさまざまな影響や刺激を引き金としながら、体に支障が起こらないように「自律的」に働く訳で、それか生理現象として現れてくるのです。
不眠症の主な原因は、すでに「不眠への不安や恐怖」だと述べました。
不眠症の人たちは、不眠を恐れるため、何とか眠れるようにさまざまな努力をします。たとえば、日中、激しい運動をしたり、昼寝をしないよう頑張ったり、朝陽を浴びるようにしたりして、そうすれば、不眠症を克服できるのではないかと考えるのです。そのような「行為」自体は、多少は眠りに役立つかもしれないものですが、その考え方は根本的に「誤り」です。
なぜかと言えば、すでに述べたように、睡眠は生理現象であり、ヒトが自在にコントロールできるものではないからです。
眠ろうとする努力は、「眠りたい」という願望や意識から来るものです。だから、不眠症の人たちは、寝る時間が近づくと、その夜の眠りのことが頭に浮かび、床に就いたのちも、意識は睡眠のことばかりを向いてしまいます。しかも、なかなか寝つけないと、だんだん焦りはじめるのです。
すでに述べたように、何かを考えたり、不安になったり、焦ったりすることは、睡眠の妨げになる訳で、眠ろうという意識が眠りを妨げていることになります。
睡眠は生理現象であり、自在にコントロールできるものではありません。眠りは、それが必要なら、向こうの方から来るものであり、それを待つしかないというのが、理にかなった考え方です。
眠りは、それを追えば追うほど、逃げていくものなのです。それは、ちょうど、鳥のようなもので、じっと待っていれば、鳥の方から寄ってくるものなのに、それを追いかけることで、みんな逃げてしまうのと同じことです。

床についた後も、眠りを追い求めず、眠りが来るのを待つという姿勢が必要です。もし、30分位しても、眠りが来ないようであれば、一旦、起きて、つまらないテレビでも観たり、面白くもない本を読んだりしながら眠りを待つのが得策なのです。大抵、一時間くらいすれば、「何とか眠れそうだ」といった状態が来るものであり、それを待って再度、床に就けばいいのです。
でないと、「眠れない」ことによる焦りと不安の中、布団の中で七転八倒しながら、長い夜を過ごすことになってしまうのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

