「雑念」は寝つきを妨げる

メンタル・ヘルス

雑念は寝つきの妨げ

 寝つきを妨げるもっとも大きな要因は、床に就いた後に、さまざまな「雑念」が浮かぶことです。それにより神経がたかぶり、緊張することで、なかなか寝つけなくります。

 床に就く前は、テレビを観たり、本を読んだり、用事をしたりしていて、「意識(注意)」はそれらに向いているので、通常、「雑念」の浮かぶ余地はありません。だが、一旦、床に就いた時、外側からの刺激がなくなることで、雑念が浮かぶ余地が生まれるのです。

雑念の浮かびやすい人たち

 たとえば、心配性な人たちは、気になることがあると、そのことが脳裏に浮かび、なかなか頭から離れなくなります。

 また、ものごとをすべてきちんとやらないと気が済まない人たちは、明日、すべき仕事や用事のことが気になり、そのことが頭に浮かびがちとなります。

雑念とは「過去」や「未来」の事柄

 「雑念」の中身を考えてみると、第一には、「過去」に関する事柄が雑念となることがわかります。たとえば、今日やった仕事の失敗とか、誰かに傷つけられたことへの腹立ちといった事柄などが、雑念の内容となるのです。

 また、「未来」に関する事柄も、「雑念」として、頭に浮かぶことかあります。明日やらなければいけない仕事や用事のこととか、大事な予定とか、さらには、明日の嫌な事柄も「雑念」となりえます。

雑念を消すには「現在」に注意を向ける

 「過去」や「未来」のことに意識が向いてしまうことで「雑念」が生まれてしまい、それにとらわれてしまうことで、なかなか寝つけなくなる訳なので、うまく寝つくためには、意識や注意を極力「現在」に向けることが必要なことなのです。

 あなたが床についている時、実は、さまざまな刺激を感じているはずです。たとえば、自らが呼吸をする音とか、身体が寝具に触れている感覚とか、呼吸によって動く腹部の動きとかです。また、寝室の外からのさまざまなもの音や人の声とか、天候次第では、風や雨の音とかが聞こえているかもしれません。

 それらの「現在」の刺激に対して、万遍なく、ぼんやりと注意を向け続けていることで、「雑念」の浮かぶ余地がなくなるはずです。

 ただ、特定の刺激に注意がとらわれ、意識してしまうと、それは、逆に寝つきを妨げることになります。神経質な人たちは、それにとらわれることで、寝つけなくなるような人たちです。大切なのは、自分のまわりの刺激に、万遍なく意識を漂わせることであり、それには、それを習得するための練習が多少必要になるかもしれません。

「ことばのクスリ-薬に代わるこころのケア-」:志村宗生;東京図書出版、2023

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